NEW 住民のための町—知らされなかった計画—
令和6年11月15日、復旧復興事業についての岸谷地区の町内会別説明会が行われた。新聞記事によれば、意見交換は非公開だったが終了後に町内会長が、「市道と宅地にできる高低差をもっと減らしてほしいと要望した。仮開通した岸谷2号線もかさ上げせず、今の高さにとどめてほしい。」と話したそうだ。
これまで町内会が、川と道路の計画の変更を要望することはなかった。では、なぜ3年以上たった今になって計画の変更を求めるのか。答えは簡単だ。計画の全体像を知らされていなかったからである。今年の1月に丁張で、道路が高い所で3m20㎝(当時)もかさ上げされることを初めて知り、被災者も住民もとても驚き困惑した。それまでずっと、計画は平面図で説明されており、高低差についての説明はなかったからである。
丁張の後、あまりの高低差に、住民から何とかしてほしいという声が出始めた。その後、以前「岸谷2号線仮開通」の中で書いたように、道路の高さは少し下げられたが、まだ最も高い所で2mもかさ上げされる。少しは下がったが、それでもまだ、これでは困るということで、今回の町内会長の話になるのだと思う。
そもそも、復興計画の全容が住民に知らされずに進められるというのは、一体どういうことだろうか。岸谷町内会はこれまで、毎月のように県と市と会合を持っていた。熱海市によれば内容は非公開だということなので、何を話し合っていたのか窺い知ることはできないが、高低差については説明していなかったということだろう。
しかし、道路と宅地との高低差はとても重要なことだと思う。道路より宅地が低くなれば、当然、大きなデメリットがある。それを住民に何も知らせず進めるなんて、あり得ないことではないのか。いや、もしかしたら、図面に書いてあったのかもしれない。しかし、専門家ではない住民には読み取ることなどできないことは、誰もがわかることだろう。説明がなければ合意もできない。そんなことは当たり前のことではないか。
熱海市の当初の計画である小規模住宅地区等改良事業制度による面的整備から、個々の宅地の造成費の9割補助の制度による整備に変更した時点で、道路の計画も見直すべきではなかったのか。現実の地形の傾斜に抗って、見栄えのいい道路を造ろうとするのは無理があったのではないかと思ってしまう。
わざわざ巨額の工事費を投じて、住民が暮らしにくくなるものを造るなんていかがなものだろうか。住民はそれを望んでいない。だからこそ、町内会長も計画の変更を求めるのではないか。それなのに、なぜ敢えて住民が望まないものを造ろうとするのか。
静岡県と熱海市には、ぜひ、実際にそこに住む人たちの要望を聞いて、それに寄り添って欲しい。そして、住民のための町を作って欲しい。それが、被災者を含め災害で町を滅茶苦茶にされた住民の願いだと思う。
(参考)令和6年11月18日付熱海新聞記事「復旧復興事業 市と県 岸谷町内会 市道整備で意見交換 『宅地との高低差減らして』