根無し草<みかん>

 私の家は土石流で全壊した。災害警戒区域が解除されても戻る家がない。避難所で3カ月近く過ごしたが、「帰る家がない」ことがとても寂しかった。どこかへ出かければ避難所へ帰って来る。でもそこは、私の帰るべき家ではない。まるで根無し草のようだと自分のことを思った。
 「早く帰る家が欲しい」その思いだけで、懸命にみなし仮設住宅となるアパートを探した。引っ越した時に、「これで帰る家ができた」と思い嬉しかった。あれから2年4カ月が経ち、まだ同じ所に居る。
 やはり伊豆山に戻りたい。私たち家族の帰るべき場所は伊豆山なのだと強く思っている。遅々として進まない復興。変わらない景色。それでも私は、あの日途絶えてしまった、当たり前に訪れるはずだった穏やかな時間を、再び伊豆山で取り戻したいと思っている。

2024年01月25日|声:被災者の声