NEW 被災地の今
令和7年9月3日現在、伊豆山では5つの工事が行われている。
中流部下部の川の暗渠部分の工事、岸谷3号線の拡幅工事、伊豆山神社線からの取り付け道路工事、消防団第4分団建設工事、そして、伊豆山防災コミニュティセンター(仮称)建設工事の5つである。
被災から4年を経て、ようやく動き出した感があるが、熱海市長は伊豆山の復興事業は令和9年3月をもって完了として、期間の再延長はしないと明言した。被災者、地域の住民からは「本当にできるのか」という声が多く聞かれる。わたしも、今の計画通りのものはできないのではないかと思う。
令和7年8月時点で20世帯の被災者が戻りたくても戻れない状況にある。令和9年3月までに戻れなかったら、住宅補助や宅地整備の9割補助はどうなるのか。もし、それまでに計画していた川や道路や公園が出来ないために、戻ることが出来なかったら補助は延長されるのか。
20世帯の方たちの不安はいかばかりかと思う。
令和7年6月議会のある議員の、被災者、避難住民に再度意向調査をしたらどうかという質問に対して熱海市は、
「今後、現地再建される方を対象に意向調査を実施したいと考えております。」
と答弁している。今後とはいつなのか。市長が示したタイムリミットまであと1年半。そのうちにというならあまりに無責任。今すぐにでもするべき。本当は、今までの全避難者を対象にするべきだと思う。それに時間がかかるなら、せめて20世帯にだけでも早急にしなければならないと思う。帰りたいのに帰れない方たちが真に望むのは何なのか。そのために、熱海市ができることはないのか。もう一度しっかりと確認する必要があるのではないか。
今工事しているところも、当初より用地交渉などの工事の支障がない箇所も複数あった。静岡県も熱海市も、工事できるところから工事していくと言っておきながら、なぜとっくに工事しないのだろうとずっと思っていた。静岡県は、家の中で工事の影響により壊れたところがあれば補償するために、まだ警戒区域が解除される前に家の様子を調査していたのに、実際に工事が始まったのはつい最近である。本来なら警戒区域を解除する前に工事するべきではなかったのか。一時立ち入りで不便はあっただろうが、それはいつやっても一緒ではないか。今だってその道路に面している人たちは不便な思いをしている。
本格的に復興が動き出したと言えば聞こえはいいが、もうすでに4年が経っているのである。市長が「警戒区域だった最初の2年は引いて考えなければならない」などと言っているようでは駄目ではないか。
普通はその2年の間にいろいろと準備を整えて、解除と同時に一気に工事を進めるものだが、熱海市においてはそうではないようだとまちづくり懇話会の中で、学識経験者の先生も言っていた。
時間がかかれば、それだけ諦める人もいるだろう。なぜ復興が進まないのか、もっとそこに住む住民の目線で物事を考えていたら、もっと早くに答えは出ていたのではないか。
伊豆山の復興において、何が一番大事なのかと熱海市長に聞いたら、おそらく「帰りたいと思う住民が一人でも多く帰ること」という答えは返ってこないだろう。
被災した住民は、ただ穏やかな日々をそれぞれの場所で過ごしていただけである。1日も早く元の日常を取り戻したいと願うことは、そんなにいけないことなのだろうか。