NEW ひまわり <みかん>
夏が来ると思い出す光景がある。
2022年5月、土石流発災の翌年に、被害のあった畑にひまわりの種をまいた。
全てを流された後に残された、辺り一面を覆いつくしていた土砂は撤去されていた。雑草だけがその存在を許されたかのような荒涼とした風景だった。
今にして思えば、誰かに見せたかった訳ではなかったような気がする。ただ、この状態を変えたかった。ここは畑なんだと確認したかったのかもしれない。大輪のひまわりが咲き誇る様子を思い描いていた。
8月になり花が咲き始めた。1.5m程になるはずのひまわりは、弱弱しく、その1/3程の背丈にしかならなかった。花もこぢんまりとしていて、とても大輪と言えるようなものではなかった。
そこはもう、今までの畑ではなかった。土砂を撤去したときに、良い土まで一緒に取られてしまって、痩せた畑になってしまった。わたしたちは厳しい現実と向き合わなければならなかった。
それでも、もう二度と畑にはならないという訳ではない。諦めるという選択肢はなかった。必ずもう一度。もうひまわりを育てるということはないと思うが、わたしたちはあの時のひまわりを、心に焼き付け改めて思った。必ずもう一度畑として復活させると。
発災から4年が過ぎて、ほんの少しだがトンネルの向こうの方に光が見えた気がしている。ここまで長かったが、これからもまだ長くかかるだろう。しかし、あの時の残念なひまわりと、あの時の思いを忘れずにいたいと思う。わたしたちに諦めるという選択肢はない。それは、あの時も今も変わらない。
