進まぬ復興<みかん>

 また年が明けてしまった。ただ時間だけが無情に過ぎてゆく中で、伊豆山の景色はほとんど変わっていない。「1人でも多くの人が帰れるように」とか、「被災者に寄り添って」だとか、空っぽの言葉がただ繰り返されている。
 発災から2年6カ月、県や市が示す川や道路の計画には、未だ5割以上の地権者が同意していない。市長は「理解しろ」と繰り返す。住民の意向に合わせて計画を変更しようなんて気は毛頭ない。「計画が進まないのは住民が計画を理解しないからだ」と復興の遅れを被災者のせいにしている。
 一体誰のための復興なのか?人が住んで初めて町になるのではないのか?
 多くの人が住めなくなる計画をゴリ押しするのは間違っている。帰りたい人がみな帰れる計画を住民は望んでいる。町は住民のものである。説得力のない理由を並べ立てて「安全・安心」を強調しても、納得などできるはずもない。歩み寄りはお互いにするもの。「こっちへ来い」と言っているだけでは前に進まない。

 

2024年01月15日|声:被災者の声