NEW 観光地のイメージ > 住民の安全<みかん>

 わたしの知人によく山歩きをする人がいる。伊豆山の山、そう源頭部の辺りも何度も歩いていると、その人は言っていた。
 何年か前に伊豆山の源頭部の近くの工事現場を歩いていたら、履いていた長靴が溶けてしまったらしい。そんなことは普通起こり得ないことなのでその人はとても驚き、このままでは大変なことになると、個人的に親交のあった熱海市長に何とかして欲しいと相談した。
 その人の話によれば、多分A・B工区の辺りではないかと思われるが、そこには、長靴を溶かすような危ない何かがあったということになる。おそらくそれは、産業廃棄物の不法投棄によるものではないかと考え、市長に何とかしてほしいとお願いしたのだ。その時市長は、
「観光地としてのイメージが悪くなるので、黙っていて欲しい。わたしが何とかするから。」
と言った。そしてその人は、市長の言葉を信じ、黙っていることにした。
 その結果、どうなっただろうか。谷は埋め立てられ、盛り土は違法に、わたしたちが何も知らず穏やかに暮らすその頭上に、高く高く積まれた。法を守らない業者とそれを止めることができなかった行政により、伊豆山の山は凶器と化した。そして、静かに降り続いた雨を引き金に、汚された山はその怒りをあらわにするように、わたしたちに牙をむいた。多くの尊い命を奪い、多くの人々の大事なものを情け容赦なく奪っていった。
 自分に任せろと言った熱海市長は、伊豆山のために一体何をしてくれたのだろうか。こうなる前に業者を止めるチャンスは何度もあったはず。なぜ止めなかったのか。
 発災後、市長は記者会見で、土石流があったので、観光客が減ったと言っていた。市長にとって、住民の安全よりも大事な観光地としてのイメージを、土石流を防げなかったことで悪くしたのは、熱海市長本人に他ならないと思えて仕方がない。

2025年03月03日|声:被災者の声