希望の苗木 ―再生を阻む土―
土石流はあらゆるものを吞み込んで、数多くのものをわたしたちから奪っていった。そして後に残されたものは、汚れた大量の泥だった。
多くの方々のご尽力でこの泥は取り除かれた。そしてその傷痕を、乾いた痩せた土が覆いつくしていた。
2年目の初夏に、ひまわりの種を被災した畑にまいた。きれいなひまわりが土色の景色を覆い隠してくれるはずだった。しかし、花は咲いたが通常の半分ほどの背丈にしかならなかった。想像以上に土の状態が悪かったからだ。畑を再生させたいわたしにとっては、非常に残念としか言いようがなかった。
今、避難先のアパートで、甘夏みかんの苗木を育てている。発災前に甘夏みかんをあげた方が、種から5cmほどの苗木に育ててプレゼントしてくれた。わたしたちにとっては、まさに希望の苗木だ。必ずもう一度元の畑に植えるんだという目標ができた。実がなるまでには何年もかかるので、わたしが生きているうちに実を食べることはできないかもしれないが、それでも、もう一度、畑を復活させたいわたしにとっては、それは間違いなく、一筋の希望の光である。