百草繚乱 ―荒れる被災地―
雑草は元気だ。伊豆山でも帰りたくても帰れず、心が折れてしまいそうな被災者にお構いなくのびのびと育っている。そろそろ草刈りをしなければという声も聞こえてくる。
少し前まではまだ草が少なく、茶色の土地が目立ち、猪の足跡があったり、掘り返した跡があちこちに見られた。動物もまた被災者の心知らずである。
雑草の緑も、土の茶色も同じで、要は荒れているのである。人が戻れない。そこで人の活動が行われていない。もう一度以前のようにと望んでも、まだどうすることもできないでいるということである。
土地は時間が経てばどんどん荒れていく。人の心も時間が経てば離れざるを得なくなっていく。私たちは時間がかかることで、自分でも気が付かないうちに大事なものを少しずつ失っているのではないだろうか。