ふさがれたフェンス—避難経路—

 

 土石流が押し寄せた時、逃げ道がなく隣家の屋根伝いに逃げた人や、袋小路に追い詰められて、ただひたすら助けを待つことしかできなかった人たちもいた。フェンスの金網を破り、消防の人に崖の上からはしごを下ろしてもらって引っ張り上げてもらったらしい。
 土石流のあった岸谷地区は、急峻な地形で崖も多く、袋小路になっているところも多い。大変な思いをしたわたしたちだからこそ、次に災害が起こった時にはちゃんと逃げられるように、普段から避難経路を確保しておくことが大切であると思う。
 既に22世帯が元警戒区域内に帰還している。しかし、その人たちの避難経路は必ずしも確保されているとは言えない。今日明日にも、南海トラフ地震が起きるかもしれないという状況であるにもかかわらず、避難路計画は止まったままである。
 発災時に破られたフェンスは静岡県の所有で、2年程後にそのまま塞がれた。次の災害を考えるのならば、フェンスはどちらからでも開く扉にするべきであった。新しい道を作ることだけが避難経路を確保することではないと思う。フェンスを扉にしたり、隣家同士で庭先を通れるようにしたり、小さな工夫をすることで救われる命もあるかもしれない。
 熱海市は令和5年6月に避難経路アンケートを行っていて、当日の避難の様子を把握している。災害は待ってくれないのだから、すぐにでも対策をするべきではないだろうか。

2024年07月03日|被災地の今:発災からの日々