帰還への迷い


 令和6年6月20日の熱海市のまとめでは、32世帯63人が地元への帰還を希望していながらまだ帰れず、避難生活を続けている。この中には、自宅が全壊等し公費解体をしたため、再建しなければ戻れない人もいれば、自宅の近所の人達が戻るのかどうか分からずに、戻るのをためらっている人もいる。そのほかにも、おそらくそれぞれが様々な事情を抱え、未だ戻れないでいる。
 7月31日に開催された第3回熱海市伊豆山復興まちづくり推進懇話会で、ある委員から提案というかお願いがあった。近所の人たちが戻るのかどうか分からずに帰還をためらっている人たちの話を聞いて、相談に乗ってあげて欲しいというものだった。個人情報の高い壁があるのは百も承知の上で、それでも何とかならないのかという切実なものだった。
 熱海市の回答は、個人情報保護の関係でそれはできないというものだった。地区別説明会に出てくれば近所の人に会えるのだから、そこで確認してくださいということである。
それは、そうなのかもしれない。しかし、年1回しか開催されない地区別説明会に行けば、全て解決する訳でもないだろう。学識経験者として懇話会に入っておられる先生のお話では、その辺の課題を上手く処理できた市町村は、比較的スムーズに帰還が進んだそうである。熱海市には、どうしたら良いのか、どんな方法があるのかもっと考えてもらいたい。帰りたいから迷っているのだと思う。その気持ちを大切にしてあげて欲しい。せっかく帰っても、仲の良かったご近所さんも居なくて、ポツンと一人きりでは悲しすぎる。

2024年08月25日|被災地の今:被災地の現状