公費解体<にーちゃん>
決心
土石流でやられた家をどうしようか、深く考えたよ
先祖代々の土地で、大事な家だし、思い出や家財は残っている
ちゃんと残って立っているし、
土石流の記憶として残したいし
ここが更地になったら、用地収用されてしまうかもしれない
河川と道路の計画は不自然で、偏っていて、意図的だ
こんなのが完成したら、伊豆山は別の町になってしまうと感じたよ
熱海市が、復旧・復興には後ろ向きなのに、強く公費解体を勧めてくるのも気にいらない
決めたんだ、土地といろんなものを守るために、この家をこのまま残すって、解体はしない、決心した
そして、伊豆山にもどるんだ
苦しみ
警戒区域に指定され、立ち入りできない2年2ヶ月の間、何度か泥棒が入った
ひどかったよ、めちゃめちゃに荒らされて、そのたびに片付ける
それに、人が入れない家は、どんどん傷んで朽ちていくんだ
家がこんな速さでダメになっていくなんて!
心を削られたよ
重く溜まって、伊豆山のことを考えることがキツくなって、今は湯河原だけど、伊豆山に近づくと、心が平静でいられないんだ
闇に落ちてしまったような苦しさだよ
後悔
思ったよ、同じ目に遭うことがあれば、
発災後に戻れるなら、家は解体する、
こんな苦しみを経験するなんて
大事なものが滅びていくのをみるくらいなら、
自分で処分する