お客さんでいること—避難所運営における教訓—

 

 2021年7月3日の発災から4つの避難所でおよそ3カ月過ごした。2日目に移ったホテルでは、500名以上の住民が17日間避難していた。そこでは何日か経つと、お昼のパンを避難している若者たちが配るのを手伝っていた。避難所の運営に避難している人たちが少しでも関わることは、とても良いことだと思った。
 1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災では大きな被害があり、非常に多くの教訓を後世に残した。わたしがかつて務めていた職場でも、当時様々な教訓が語られ防災の糧となった。その中に、「避難者をお客さんにしてはいけない」というものがあった。避難者自身が運営の一端を担い、みんなが避難所での日々のことを自分事として考えることで、避難所の運営も上手くいくというものである。おそらく東北の震災の時や、熊本の震災の時もその教訓が生かされたはずである。
 熱海市ではどうだっただろうか。最初こそ少しは関わることができていたが、次の避難所に移った時には、それはすっかり無くなっていた。熱海市の職員には何度か避難者でできることはやりたいと申し出ていたが、それが聞き届けられることはなかった。そしてわたしたち避難者はお客さんになってしまった。
 結果として、熱海市の考えていることも良くわからなければ、避難者の声もなかなか行政には届かなかった。なぜ、このようなことになってしまったのだろう。過去の教訓を生かすならば、熱海市は避難者の申し出を受け入れるべきではなかったのか。あの時、それが行われていたなら、「今」は少し変わっていたかもしれない。そう思うと非常に残念である。

2024年07月03日|被災地の今:発災からの日々