逢初川源頭部

NEW 公表した事実 あってはならない事実 ―配水施設の破損の状況―

 土石流で源頭部下流部の赤井谷出口にある伊豆山第一配水池が破損した。その容量は125㎥、小学校の25mプールの約1/3だ。ここの2本の水道本管が伊豆山浄水場下の配水池と接続されている。
 土石流により複数の配水施設が破損し伊豆山地区が断水したが、配水系統のネットワーク化により、別ルートからの給水等により7月21日までに、断水が解消されたと厚生労働省のHPにある。実際は16日には解消されているようである。作業に当たった方々に感謝申しあげる。

 一方、この伊豆山第一配水池が破損したことは、一般に知られていない。
なぜなら伊豆山字赤井谷にあった伊豆山第一配水池は、県、市の土石流の原因究明の中には、何も記述がないからである。
 この施設は、土石流特別警戒区域(レッドゾーン)にピンポイントで指定がある。昭和35年築造と熱海市の記録にあるので、築造後に施設があることにより特別区域に指定されたのか、土地の形状により指定されたのかは定かでない。いずれにせよ絶対に破損してはならないものである。本来なら防護壁を設置するなり、別の場所への移設を考えるべきではなかったか。
 源頭部の水道管の破損により900㎥以上(元副知事の記者会見によると1800㎥)の水道水が流出し、この施設から流出した分と合わせると数千㎥の水が流出したことになり、これが土砂を押し流し土石流となり、時速40㎞で住宅地を襲ったと考えている。
 土石流の第1波の発生と言われているのが10時28分、この時は秒速2m、時速では約7㎞の流下であった。市道伊豆山神社線からそれを見ていた私の同級生は、「そろそろ、母親を家から連れてこないと」と近所の人と話し、母親を迎えに行っている。また、消防団や町内会の人たちも交通整理していて、危険だという意識は持っていなかったようだ。
 それが突然、第1波を大きく上回る土石流に襲われた。この時の映像が、あの有名な赤い建物を飲み込んだ強烈な映像である。この時の土石流が多くの人たちを巻き込んだ。同級生をもだ。これが、第2波である。
 なぜ、ゆっくりとした流れが破壊的流れに変わったのか。理由は、どこからか大量の水が供給されたと考えられるのが普通だろう。このことが分かっているからこそ、4年が経とうとしても、伊豆山第一配水池の破壊による大量の水道水の流出を公表できないのではないか。なぜ、28人の命を奪い、被害を大きくした原因を総合的に究明しないのか。多くの命を奪ったのは、盛り土の崩壊でなく、土石流であるのに。

 県、市は、この配水施設破壊による水道水の大量流出について、盛り土が崩れた直接の原因ではないとして、これからも自ら公表することはないだろう。これでは、失敗から学び、次につなげていくことはできない。起きたこと全ての検証の中からしか真実は見えてこないと思う。

 

2025年05月12日被災地の今:逢初川源頭部

折れた水道管


 県が行政代執行し、撤去された門扉のそばに、折れた水道管が露出していた。盛り土崩壊直後の写真では、そこは崩れていない。原因が水道か調べるために掘り出したのか、古く使われていなかったものなのか。
鉄製の水道管は、錆びて細かな穴のようなものが空いており、中に土砂が入っているように見える。40年、50年?以上前に埋設された時の厚さは5~6㎜くらいあったのだろうか。そしてそれは適切に管理されていたのだろうか。1.2m前後に埋設されていたのだろうか。露出していたところでは、そのくらいの深さのようだが、先に行くにしたがって深くなっていく。
このHPの報道リンクから発災状況の源頭部動画、水道管破裂を見ていただくと、地下数メートルのところから噴出する水道水を見ることができる。
どこから持ってきたのか分からない土砂に埋められたせいか、水道管は腐食し、薄くなっていたのかも知れない。
 水道管などを埋設する場合は、保護のため周囲を山砂など埋めるが、ここでは直径20㎝くらいの石やそこにあったと思われる黄茶色の土に包まれている。そしてその上を、土砂投棄するためのダンプが通って行った。
市が設置した門扉の完成後は、投棄者不明の土砂投棄は無くなったが、今度は太陽光発電のための資材を載せた車が走ったことで、管はダメージを受けていなかったのか、疑問に思う。

2024年08月25日被災地の今:逢初川源頭部

盛り土の中身


 先日、静岡大学の先生が、盛り土の中に多摩川河口からの土砂が含まれ、これは隙間ができやすく水分を溜めやすい、盛り土としては適さない土砂だと発表があった。以前には、崩落地の黒色の土砂は、褐色の土砂よりも崩落しやすい性質を有していた可能性を同じように示している。
 県の行った落ち残った盛り土の代執行工事は、一般的な斜面の安定解析法により設計された。地下水の問題もあるが、盛り土として適さない土砂は安全性に問題がないのか、一般的な方法で良いのか疑問に思っている。
 また、県の盛土条例は、盛り土に含まれる汚染物質が環境に与える影響にも重点を置いているため、盛り土外に流出する水を年2回検査することになっている。この盛り土からの水も検査していて、測定結果は、県の規則の基準以下と発表されている。しかし、撤去した土砂に鉛が含まれていたのであるから、残した盛り土にも鉛が含まれている可能性は否定できない。
 写真は、行政代執行工事中に、盛り土から出てきたものである。コンクリート片、埋め立てられた木、オイル缶、今回発表された盛り土に適さない土砂もあったようだ。そして、今も谷には、盛り土から出た数えきれない岩がそのまま置かれている。
 県は、盛り土が安全だとは言わない。盛り土の安全性は確保するようにしている、と言っている。つまり、確保するようにしているが、確保できているかはわからないということなのだろうか。

2024年08月25日被災地の今:逢初川源頭部

静岡県が行った行政代執行による盛り土の安定性

 

 2021年7月3日発生の土石流の起点、逢初川源頭部の盛り土の行政代執行工事(撤去工事)が完了した。2023年3月の砂防堰堤の完成、残る盛り土の不安定土砂の撤去工事により安全が確保されたとして、災害対策基本法第63条による警戒区域が同年9月に解除され、立ち入りが自由にできるようになった。これらの二つの工事は、住民の不安解消に役立ったと感謝したい。今回の行政代執行で残された盛り土は、県の工事により安全性が確保されたように見える。盛り土が崩壊した原因は、県の検証委員会の推定では、一日に1万2500トンあったとされる地下水であるとされている。では、残された盛り土の工事は、一日1万2500トンの地下水があることを想定した設計になっているのだろうか。
 答えは、否 この工事は、一般的な斜面の安定解析手法により設計され、盛り土斜面に排水管や排水路を設置して、崩壊の原因となる水を速やかに盛り土外に排出するようにしたものである。これは一見、正論のように思える。しかし、盛り土の崩壊原因は、一日1万2500トンの地下水だったのでは?ではなぜ、その地下水を基に設計をしないのだろうか?あの日と同じ雨がまた降ることがあれば、同じように一日1万2500トンの地下水で盛り土内が満たされるようになるだろう。それが崩壊しないためにはその地下水を排出できるだけの排水施設が必要なのではないだろうか。

2024年07月03日被災地の今:逢初川源頭部

行政代執行 —門扉の行方—

 

 逢初川源頭部の残土撤去の行政代執行が2023年6月に完了した。崩落した盛り土は小田原市の会社が、2006年から無許可や無届で土地の形質変更行為を行い、2007年に静岡県の条例に従い、熱海市に計画の届け出を行ったものであるとされている。当初は、1万㎡未満の土地に約3万6千㎥を盛り土する計画であった。
 しかし、その後も土砂の投棄は繰り返され、着実に積み上がって行った。2011年2月に土地所有権は、現所有者に移動している。その後もこの土地に、投棄者が不明のまま土砂の投棄が行われていた。このため、土地所有者の要請を受け、熱海市が門扉の設置を、修繕工事として12月から行い、翌年1月に完了している。ここでの大きな疑問は、なぜ熱海市が不法投棄を理由に、現所有者の土地に工事費を負担(約100万円)し、門扉を設置したのだろうかということである。私有地の不法投棄を防止するために、行政が公費を投入して門扉を作るなんて聞いたことがない。そして土石流が起こり、静岡県が残った不安定土砂を行政代執行で撤去し、その費用を元所有者に請求している。ここで疑問に思うのは、門扉の撤去費用の請求先である。静岡県はそれを、元所有者に請求している。なぜ元所有者は、既に所有していない土地に、熱海市が設置したものの撤去費用を請求されるのか?門扉の所有権は熱海市にあると、私は思う。これは誰が払うのが正解なのだろうか?

2024年07月03日被災地の今:逢初川源頭部

仮設防災工事 ―源頭部D工区―

 

 逢初川源頭部の北側奥に位置するD工区と呼ばれるところで、仮設防災工事が始まった。工期は令和6年2月から5月末までと掲示されている。工期通りだと梅雨の前に完成する。そうすれば、住民も少し安心できることだろう。しかし、5月に確認すると、工期が7月末に変更されていた。7月3日に土石流が発生したことを思えば、住民としては、非常に不安である。でも、なぜ仮設がついているのか。防災工事をする目的は何なのか。そもそも仮設防災工事が行われていることも、住民は知らされていない。また、防災工事の掲示の横に、宅地開発のための林地開発許可証も掲示されている。工事施工業者名は未定、完了予定は令和10年3月31日になっている。いずれも、静岡県東部農林事務所長の許可である。
 過日、静岡県熱海土木事務所に確認したところ、防災工事のことは知らず、私有地のため立ち入ることはできないとのことである。静岡県の組織の中であっても、部署が違うからということなのだろう。しかし、土石流の原因の一つとして、行政の不作為があったと前県副知事が言っていたが、縦割りで、関係部署との連携がとれていない状況は、以前と何も変わっていないように思われる。
 以前の説明会で熱海市は、現在工事している場所について、責任をもって静岡県とともにしっかり指導すると言い切っていた。しかし、熱海市からも住民に対する説明はなにもない。

2024年07月03日被災地の今:逢初川源頭部