県が行政代執行し、撤去された門扉のそばに、折れた水道管が露出していた。盛り土崩壊直後の写真では、そこは崩れていない。原因が水道か調べるために掘り出したのか、古く使われていなかったものなのか。
鉄製の水道管は、錆びて細かな穴のようなものが空いており、中に土砂が入っているように見える。40年、50年?以上前に埋設された時の厚さは5~6㎜くらいあったのだろうか。そしてそれは適切に管理されていたのだろうか。1.2m前後に埋設されていたのだろうか。露出していたところでは、そのくらいの深さのようだが、先に行くにしたがって深くなっていく。
このHPの報道リンクから発災状況の源頭部動画、水道管破裂を見ていただくと、地下数メートルのところから噴出する水道水を見ることができる。
どこから持ってきたのか分からない土砂に埋められたせいか、水道管は腐食し、薄くなっていたのかも知れない。
水道管などを埋設する場合は、保護のため周囲を山砂など埋めるが、ここでは直径20㎝くらいの石やそこにあったと思われる黄茶色の土に包まれている。そしてその上を、土砂投棄するためのダンプが通って行った。
市が設置した門扉の完成後は、投棄者不明の土砂投棄は無くなったが、今度は太陽光発電のための資材を載せた車が走ったことで、管はダメージを受けていなかったのか、疑問に思う。
逢初川源頭部
盛り土の中身
先日、静岡大学の先生が、盛り土の中に多摩川河口からの土砂が含まれ、これは隙間ができやすく水分を溜めやすい、盛り土としては適さない土砂だと発表があった。以前には、崩落地の黒色の土砂は、褐色の土砂よりも崩落しやすい性質を有していた可能性を同じように示している。
県の行った落ち残った盛り土の代執行工事は、一般的な斜面の安定解析法により設計された。地下水の問題もあるが、盛り土として適さない土砂は安全性に問題がないのか、一般的な方法で良いのか疑問に思っている。
また、県の盛土条例は、盛り土に含まれる汚染物質が環境に与える影響にも重点を置いているため、盛り土外に流出する水を年2回検査することになっている。この盛り土からの水も検査していて、測定結果は、県の規則の基準以下と発表されている。しかし、撤去した土砂に鉛が含まれていたのであるから、残した盛り土にも鉛が含まれている可能性は否定できない。
写真は、行政代執行工事中に、盛り土から出てきたものである。コンクリート片、埋め立てられた木、オイル缶、今回発表された盛り土に適さない土砂もあったようだ。そして、今も谷には、盛り土から出た数えきれない岩がそのまま置かれている。
県は、盛り土が安全だとは言わない。盛り土の安全性は確保するようにしている、と言っている。つまり、確保するようにしているが、確保できているかはわからないということなのだろうか。
静岡県が行った行政代執行による盛り土の安定性
2021年7月3日発生の土石流の起点、逢初川源頭部の盛り土の行政代執行工事(撤去工事)が完了した。2023年3月の砂防堰堤の完成、残る盛り土の不安定土砂の撤去工事により安全が確保されたとして、災害対策基本法第63条による警戒区域が同年9月に解除され、立ち入りが自由にできるようになった。これらの二つの工事は、住民の不安解消に役立ったと感謝したい。今回の行政代執行で残された盛り土は、県の工事により安全性が確保されたように見える。盛り土が崩壊した原因は、県の検証委員会の推定では、一日に1万2500トンあったとされる地下水であるとされている。では、残された盛り土の工事は、一日1万2500トンの地下水があることを想定した設計になっているのだろうか。
答えは、否 この工事は、一般的な斜面の安定解析手法により設計され、盛り土斜面に排水管や排水路を設置して、崩壊の原因となる水を速やかに盛り土外に排出するようにしたものである。これは一見、正論のように思える。しかし、盛り土の崩壊原因は、一日1万2500トンの地下水だったのでは?ではなぜ、その地下水を基に設計をしないのだろうか?あの日と同じ雨がまた降ることがあれば、同じように一日1万2500トンの地下水で盛り土内が満たされるようになるだろう。それが崩壊しないためにはその地下水を排出できるだけの排水施設が必要なのではないだろうか。
行政代執行 —門扉の行方—
逢初川源頭部の残土撤去の行政代執行が2023年6月に完了した。崩落した盛り土は小田原市の会社が、2006年から無許可や無届で土地の形質変更行為を行い、2007年に静岡県の条例に従い、熱海市に計画の届け出を行ったものであるとされている。当初は、1万㎡未満の土地に約3万6千㎥を盛り土する計画であった。
しかし、その後も土砂の投棄は繰り返され、着実に積み上がって行った。2011年2月に土地所有権は、現所有者に移動している。その後もこの土地に、投棄者が不明のまま土砂の投棄が行われていた。このため、土地所有者の要請を受け、熱海市が門扉の設置を、修繕工事として12月から行い、翌年1月に完了している。ここでの大きな疑問は、なぜ熱海市が不法投棄を理由に、現所有者の土地に工事費を負担(約100万円)し、門扉を設置したのだろうかということである。私有地の不法投棄を防止するために、行政が公費を投入して門扉を作るなんて聞いたことがない。そして土石流が起こり、静岡県が残った不安定土砂を行政代執行で撤去し、その費用を元所有者に請求している。ここで疑問に思うのは、門扉の撤去費用の請求先である。静岡県はそれを、元所有者に請求している。なぜ元所有者は、既に所有していない土地に、熱海市が設置したものの撤去費用を請求されるのか?門扉の所有権は熱海市にあると、私は思う。これは誰が払うのが正解なのだろうか?
仮設防災工事 ―源頭部D工区―
逢初川源頭部の北側奥に位置するD工区と呼ばれるところで、仮設防災工事が始まった。工期は令和6年2月から5月末までと掲示されている。工期通りだと梅雨の前に完成する。そうすれば、住民も少し安心できることだろう。しかし、5月に確認すると、工期が7月末に変更されていた。7月3日に土石流が発生したことを思えば、住民としては、非常に不安である。でも、なぜ仮設がついているのか。防災工事をする目的は何なのか。そもそも仮設防災工事が行われていることも、住民は知らされていない。また、防災工事の掲示の横に、宅地開発のための林地開発許可証も掲示されている。工事施工業者名は未定、完了予定は令和10年3月31日になっている。いずれも、静岡県東部農林事務所長の許可である。
過日、静岡県熱海土木事務所に確認したところ、防災工事のことは知らず、私有地のため立ち入ることはできないとのことである。静岡県の組織の中であっても、部署が違うからということなのだろう。しかし、土石流の原因の一つとして、行政の不作為があったと前県副知事が言っていたが、縦割りで、関係部署との連携がとれていない状況は、以前と何も変わっていないように思われる。
以前の説明会で熱海市は、現在工事している場所について、責任をもって静岡県とともにしっかり指導すると言い切っていた。しかし、熱海市からも住民に対する説明はなにもない。